特集1.品種
1:なぜ今、品種導入か
■1-1.やぶきた偏重の問題ってなに?
やぶきたの芽
(2000.04.19牧之原)

昭和30年「やぶきた」が奨励品種に指定され品質・収量が経営面から最適な品種として全国に広まり、現在では全国の品種茶栽培の8割、静岡県においては9割以上を占めるほどに普及しました。これは「やぶきた」のもつ経済性の高さ、栽培範囲の広さによるものです。 やぶきた品種のシェアが高まったことは、原料の品質に対する信頼 感(期待感)が高まり、ブレンドして販売する茶商さんにとっても歓迎されることでした。しかし一方で、「お茶に個性が無くなった」と言われているのも事実です。 また、生産現場では、小規模の自園自製農家が減少し、製茶工場の規模拡大やさまざまな協同化によって省力化、コストダウンが図られています。この製茶工場の合併や大型化によって、最盛期に摘採時期集中による「刈り止め」が起こり、品質低下の原因、労力負担の集中が問題点とされています。 やぶきた偏重はとくに静岡県にとって深刻問題ですが、多品種を導入して個別揉みされている鹿児島県でも、販売やブランド化を考慮して品種を検討する動きがみられています。

基本編ロゴ 品種別普及面積
品種が普及しない要因(アンケート)
(静岡県茶業試験場アンケートより)


品種導入の目的■1-2.私が考える品種導入の目的

「摘採時期集中化を避けるための早中晩の構成」が品種導入の目的といわれていますが、私はそればかりでも寂しいな、と思います。やはり「品種の特性を活かす」「品質を落とさないお茶づくり」を品種導入の目的としたい。今の時代は、良質なものを安く提供して、経済競争に打ち勝つ農業へと変わっていかなければなりません。やぶきた偏重によって芽の硬化が進み、摘採時期後半には品質低下を免れない現状から、早中晩の構成で品種を導入することによって各品種を適期に摘採して製品の品質向上していくこと。そして、地域性や品種特性を活かした新しい製品化が、前向きな茶業につながると思うのです。


地域ぐるみで品種を決めよう■1-3.導入品種は組織で統一しよう

品種の組み合わせについては、個人の好みでバラバラに導入すると管理や販売の上でさまざまな問題が出てきます。たとえば、早生の摘採を終えて防除をしたいのに、隣には晩生の茶園で開葉しているような状況では困りますし、病害虫に対する抵抗力も品種によって異なります。また、品種茶の特性を活かして流通で力をもたせるためには、ある程度のロットをまとめて流す必要があります。
品種は、それぞれの産地の特徴を出し、産地ブランドの名を支える要素となります。ですから、地域全体で品種を決めて導入することが望ましいのです。地域あるいは茶工場で「私たちのお茶づくり」という方針に基づいて導入する品種を選定し、新しい経営につなげていきましょう。

基本編ロゴ 鹿児島県知覧の奨励品種

 

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特集1もくじ 1-1:なぜ今品種1-2:地域特性を活かす1-3:選定の仕方1-4:品種構成への期待1-5:実際に導入するには

 

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