You are here: TOPPAGE 歴史探訪案内 昔ばなし 第7回 おへそ山  

昔ばなし

おへそ山

 今から四百年ぐらい前のこと。
 遠江の国佐野郡の薗ケ谷村に、印徳寺という小さなお寺がありました。
その寺の向かい側にお薬師様のお堂があって、門前の石段のそばに、大きな杉の木がありました。
 ある夏の午後、たいへんひどい夕立ちがあり、その大きな杉の木に雷が落ちました。
それはそれはものすごい音でした。
 印徳寺のおしょうさんが、驚いて見に行くと、大杉はまっ二つにさけ、根元に雷獣が大けがをして苦しんでいました。
やさしいおしょうさんは、あわれに思い、傷の手あてをしてやりました。
 雷獣は、たいへん喜んで、
 「ありがとう。ありがとう。」
と、何べんもお礼をいい、自分のおへそをとると、おしょうさんに、
 「このおへそは、お百姓が日照りで困ったときに出しておがむと、きっと雨がふってきます。」
と、いったかと思うと、かきけすようにどこかへ行ってしまいました。
 おしょうさんは、信じられない気持ちでしたが、それを、たいせつに錫の茶筒に入れ、お寺にしまっておきました。
 ある年、日照りがつゞき、これではお米がとれないだろうと、村の衆はたいへん心配をしました。
おしょうさんも気が気ではなく、毎日空をあおいでいましたが、ふっとおへそのことを思い出しました。
 おしょうさんは、おへそをとり出し、ちょんだらい(三本足のついた、たらい)に水を入れ、その中に、雷獣のおへそを浮かせました。
 それを持ったおしょうさんは、この辺で一ばん高い二本松のあるお山へ登っていきました。
おしょうさんのあとから、村の衆もおおぜいついて登っていきました。
 二本松につくと、おしょうさんは雨乞いのお祈りをし、村の衆もそれにあわせました。
 鐘やたいこをうち鳴らし、
 「まかさった竜王大明神、雨をふらせたまえ。」
と、となえました。
 一日たち、二日たち、三日目になったとき、前の山に黒い雲がわき出て、みるみるうちに空いっぱいにひろがり出し、それといっしょにはげしい雨が降って来ました。
村の衆はおどりあがって喜んだのなんのって。
 それから後、日照りで困った時にはきっと、おへそを二本松に持っていっておねがいをしたそうです。
いつの時にも三日もすると雨が降り、村の衆を喜ばせました。
 村人たちは「おへそを出して見てはいけない」というおきてをつくり、雨乞いがすむと、お寺の厨子の中に大切にしまいました。
雨乞いのとき、おへそを見た人の話しでは、それはさざえのふたのようなもので、金色の毛が生えていたそうです。

*資料提供/掛川歴史教室

 

 

昔ばなしのもくじ おへそ山 おへそ山と雨乞いに関する考察  

 

お気軽にご意見ご感想をお寄せください。

お茶街道文化会
主催:カワサキ機工株式会社