特集6.土壌
1:土の役割とはそもそも何だ?
静岡県茶試富士分場にて

 

■1-1.土壌を語る前に

土壌を特集するにあたって、「物理性」と「化学性」に分類し整理してお話するのが論理的な方法かもしれませんが、それでは学術的で難解な話になってしまいます。この木村塾では「生産者の方にとって有意義な情報を」という観点から、現場において直面するさまざまな“知っておきたいこと”を、なるべくわかりやすくお知らせしたいと心がけています。ですから、今回のテーマ「土壌」では少し難しい言葉も出てきますが、生産者の方に知っておいていただきたい内容を私なりにピックアップしてお話したいと思います。


■1-2.土はどんな役割を果たしているの?

農業において、土壌は作物を生育させる基盤です。茶園で土が果たしている役割は、「(1)茶樹を支える(2)養水分や空気を保持する(3)微生物の生存」などがあげられます。
つまり、茶園土壌は茶樹への養水分供給の源であり、その養水分を運び蓄える役割をする根の生育環境であること。このあたりが土壌を考えるうえで大切なポイントです。


団粒の構造
(a)密につまった土

孔隙の量=25.95%
(b)粗につまった土

孔隙の量=47.64%
   
(c)団粒が密

孔隙の量=45.17%
(d)団粒が粗

孔隙の量=72.58%

■1-3.土の構造

土とは、コロイドと呼ばれる土壌粒子と、その間にある隙間や物質の全体の姿を「土」と呼びます。粒子の大きさと隙間がどんな状態かによって、土の構造が違います。たとえば粘土質の土壌は右図(a)のように孔隙が少なく粒子が密に詰まっています。弾力のあるフワフワした土は、(d)のように粒子が団粒を形成していてその団粒にも孔隙があって空気や水を含み、さらに団粒同士が粗く集合化していて粗孔隙の多い状態です。土はもともと岩や火山灰などが長い年月で変化したもので、母岩やできた時代、その後の風化や変化によって土質土性が違います。

基本編ロゴ 団粒はどうやってできるのか

■1-4.土壌の構成

土壌を地下部の構成(垂直)としてみた一例です。土壌は一般的に火山灰土壌や赤黄色土などと分類されていますが、その中でも地下部の構造や腐食の状態はさまざまです。下層土に礫があれば透水性が高く、地下部に不透水層があれば加湿となり根を枯らす場合もあります。


■1-5.茶樹が好む土壌・茶園に適した土壌

基本編でもお話ししたように、茶樹は弱酸性を好む植物でpH4〜5が適しているとされています。酸度に対して茶は比較的強い作物ですが、中性に近くなると逆に生育が抑制されます。さらに、茶樹の細根(吸収根)は多量の酸素を必要としますから、ち密化や過湿に対しては極めて弱い作物です。従って通気性、透水性を良くすることが大切です。永年作物である茶を栽培管理していくには、これらの化学性、物理性を茶樹の生育に適した環境にコントロールしていく必要があります。

このように説明すると神経質になりがちですが、広く作物全般から見れば、茶樹は非常に適応力のある作物といえます。

基本編ロゴ 茶樹に最適な土壌とは?
酸素不足がもっとも大敵
生育に必要な酸素量


内質審査
品質への影響

■1-6.土の性質と品質への影響

また、土壌の種類によって品質に差が出ると昔から言われてきました。しかし、土が荒茶品質に影響するかどうかは、明らかにされていません。一口に土壌といってもその構造はさまざまで、土性や土質の影響よりも、気象や土壌の物理性、肥沃さや摘採熟度の方が大きいと思われます。

おおざっぱに言えば、赤黄色土や黄色土の粘土の多い土壌は、味に力があり強い味をもっています。色沢は青みがやや少なく、水色はやや黄色を帯びています。腐食質の多い火山灰土壌のものは苦味が強く色沢は青黒味をもっているといわれています。砂質土壌のものは色沢は淡い青緑色で香味は淡白であるといわれています。このような品質に対する評価は具体的にはよく解っていません。あくまでも推測の範囲で言われている内容です。今では土壌改良や肥料種類の選択などに関心をもって品質向上に努力され、地域の特色を生かした生産が行われています。

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特集6もくじ 6-1:土のはたらき6-2:土の中の変化6-3:理想の三相分布6-4:土質や土性のこと

 

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