3月号 1.寒害とはどういう被害か
-寒害のメカニズムと被害にあう状況を知る-


3-1-1.芽の状態と気温推移に注意を

比較的暖かかった秋の気温推移から萠芽している茶園が見受けられ、立地によっては寒害が心配されます。また「今年は春が早い」との声も聞かれますが、3月中旬頃にはおおむね寒い日が訪れる年が多く、萠芽後の霜害にも影響する危険性があります。気象庁の予報によると、中部地帯は平年並または平年より高めの気温で推移すると発表されていますが、被害にあいやすい立地の茶園では春先の急な低温に注意してください。

今回は、寒害にあった場合の対処と凍霜害の対策を中心にお話します。まず寒害については次の4点を覚えておきましょう。

  1. 冷たい空気がたまりやすい場所、寒風が強く吹きあたる場所を知ること。
  2. 寒害の被害度合を把握し、正しく診断すること。(診断は3月)
  3. 診断したら、慌てずに適切な時期に処置をすること。
  4. 摘採葉に被害葉が混入しないことを一番に考えて処置を行うこと。


寒害とは
3-1-2.寒害とはどういう被害か

寒害とは、その時の低温や寒風によって茶樹に発生する障害のことです。茶樹は、気温が−10〜−13℃で葉が褐変し、−15℃以下になると葉や枝が枯れてしまいます。


細胞液濃度
3-1-2b.寒害のメカニズム(細胞液の濃度)

寒害について正確な判断をするには、どういう状況のときにどういう事態が起こって寒害が発生するのか、というメカニズムを知ることが大切です。 それには茶樹の生理的な問題が関わってきます。
寒害の生態的な原因のひとつとして、前年の夏から秋にかけての最終芽(枝も含めて)が耐寒性を獲得できていないことがあげられます。 秋整枝の後徐々に日照時間が短くなり気温が低くなります。すると、葉や枝の水分が減少し、細胞液の濃度が高まってきます。細胞液の濃度が高まると凍りにくくなります。真水と濃い砂糖水とでは真水の方が凍りやすい...、あの現象と同じです。特に関係するのは糖濃度で、糖濃度が高いほど凍りにくい状態にあります。やわらかく水分の多い芽は、糖濃度が薄くて凍りやすい状況にあり、組織の繊維がまだ発達していないため、寒さに弱いのです。寒害のメカニズムからいえば、まず夏から秋に冬の準備ができていたかどうかが重要になります。

基本編ロゴ 細胞内凍結と細胞外凍結
包葉の耐寒性と中の新芽の被害


寒害のメカニズム
3-1-2c.寒害のメカニズム(環境や品種による抵抗力)

また、場所や気象条件、品種や栽培方法によって茶樹の抵抗力に違いがあります。養分では、カリ分の多少で寒害の程度に変化があり、カリが少ないと寒害を受けやすい。栽培上では、完全に成熟した状態で冬を迎えなければ組織がやわらかく細胞液濃度が低いために寒害を受けやすいと言えます。

※カリは繊維を組成する成分です。寒冷地では肥料のカリ成分を多くします。
しかし、リン酸や苦土の効果が抑制される拮抗作用があるため、通常の2〜3割増までがよいでしょう。

冷気は低い方へ3-1-3.寒害に遭いやすい場所は?

寒害の状態を把握し、適切な処置を行うには、自分の茶園の中で寒害にあいやすい場所はどこなのか知っておくのも大切なことです。被害の程度を現場で見ることがありますが、場所によって低温の程度が違うために被害程度にも差が出ます。冷たい空気は重いため、右図のように下に停滞して被害を受けます。とくに盆地状の地形では、この現象がはっきり出ます。 風があれば冷たい空気が撹拌されるため低地の被害は軽減されますが、風が無いと右のように温度の層ができて低地に冷気が停滞して被害を受けるのです。
さらに中山間地では畦の谷側など、部分的に被害にあいやすい場所もあります。被害を受けやすい立地の茶園について、樹齢等を考慮して改植の機会に晩生品種を導入するといった長期的な対応策が求められます。

基本編ロゴ 冷気がたまりやすい場所

微気象3-1-4.微気象による被害程度の差

高さによる気温の差というのは2〜3cmでも差が出ます。畦の凹みがあったときには、凹んだ所だけ被害を受けたりします。百葉箱で計測される高さは1.5mですから、株面気温は気象庁の発表気温よりも何度か低くなっています。芽が伸びた後に低温に見舞われたとき、新芽の下の方(第4〜5葉)は被害を受けても芯や第1葉は生き残る場合があります。これは、微気象の違いによって下の方に冷気がたまったためと、頂部は冷気が撹拌されたことが原因と思われます。

基本編ロゴ 直掛け被覆がダメなわけ
被覆の段差による被害程度の差

品種による抵抗力3-1-5.品種の耐寒性

茶は亜熱帯性植物です。それを人間が利用しやすい品種、土地の気象や条件に応じた品種を選抜して栽培しているのです。 早生品種は早く(気温が低いうちに)樹体内の養水分の転流がはじまって早く開葉するもので、養水分の転流が始まるということは「耐寒性が解消される」ということです。耐寒性の解消とは、養水分濃度が高い状態にあった状態から、気温の上昇とともに徐々に解消されて、養水分が上に送られるようになり「春近し」という樹体になっていくことです。ですから萠芽期よりも開葉期の方が低温に弱く、葉が硬化した五葉目に入るとやや強くなるのです。 鹿児島でつくられている「ゆたかみどり」などの早生品種は、気温が低いうちに養水分の転流が始まるため、春期の低温に弱い品種です。

基本編ロゴ 樹体温とは?

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