8月号 3.秋整枝の意味を知っておこう
-秋整枝の目的と判断基準-
9月下旬から10月にかけて秋整枝の時期を迎えます。今月は、秋整枝の目的や意味をお話しましょう。(技術的なことは9月号で)


秋整枝の目的8-3-1.秋整枝の目的は芽数のコントロール

秋整枝には、摘採面を整えて摘採時に古葉が混入するのを防ぐ目的と、芽の均一性をはかるという目的があります。そして、いちばん重要な目的は「芽数をコントロールすること」です。 更新以外の一般管理の中で、芽数をコントロールできるのは秋整枝だけです。(春整枝、一番茶後の整枝は芽数のコントロールのための処理ではありません。)茶樹の生理生態を利用して、翌年一番茶の収量構成を狙い通りにもっていくのが秋整枝。これをいかに上手にやるかは、経営に直結する大切なことです。


生産目業と樹勢8-3-2.生産目標と秋整枝

秋整枝によって樹勢が良くなるわけではありません。では、秋整枝とは何か。茶園の状況と生産目標から、現状の茶園の力を最大限に経済的に活用させるべく行う作業が秋整枝です。 そのため、秋整枝前に明確な生産目標を掲げることが大切です。茶農協あるいは経営単位で力のある芽が欲しいのか、芽数を増やしたいのか、あるいは製茶するときに深蒸なのか普通蒸なのかも考慮する必要が出てきます。そして、それらの決定には、取引先の要望や有利性を考え組織の生産方針に向かって均一で良質な生葉を生産するために、組織ぐるみで秋整枝の検討をすることも考えるべきでしょう。

基本編ロゴ 茶工場単位で綿密な摘採計画を
推定収量の計算方法


収量構成を調整●8-3-3.秋整枝によって収量はどうなる?

整枝によって増収することはありません。その茶園がもっている力は同じですから、大きな芽が数少なく収穫されても困るから調整しましょう、というのが秋整枝です。 整枝によって芽数を増やしても、一芽重が増えませんから収量はあまり変わりません。逆に芽重型にしたときには、品質の向上は見込めますが、芽数が少ないうえに大型芽になって品質評価が下がるのを避けて摘採を早めたり浅摘みしますから、収量は減収傾向となります。秋整枝の意味としては「収量構成を理想の状態に近づけるために行うもの」と考えてください。芽数をコントロールすることによって、収量と品質が決まってきます。ですから、摘採時の収穫と相場展開を想定して、品質で収量をカバーできるのかを考えなければなりません。


判断要素8-3-4.秋整枝の判断要素とは?

しかし、目標品質に従って秋整枝を決定しても、茶樹がそれに応えるだけの力をもっていなければ思い通りの結果は得られません。現状の樹勢が悪ければ、多くの葉を刈り落とすことが茶樹への負担となってしまいます。 秋整枝の判断要素としては、1)園相の良否、2)収量構成、3)最終芽の生育状況の3点があげられます。 園相の良否は、葉色、葉の大きさ、葉量、葉層、茎や枝の太さを観察して、力のある茶園か、衰えている茶園かを判断します。これには、摘採回数を含めたそれまでの茶園管理が関係してきます。収量構成は、今年の収穫を振り返れば「もう少し芽数が欲しかった」または「1芽重を増やしたい」など、それぞれに反省を持っていると思います。そして、最終芽の観察。私は、秋整枝のときにはまず最終芽を観察します。最終芽が生育良好な場合は、徒長した芽をつくらないよう深めに整枝して芽数を増やし、生育が普通以下の茶園では浅めに整枝して芽数を増やさないよう調整します。たとえ葉層が浅くても、最終芽の生育状態がよければあたりまえに整枝して充分に良い芽が得られたりすることもあります。

基本編ロゴ 葉層が厚いor薄いとは?


8-3-5.茶園管理全体の中で秋整枝を考える

秋整枝によって芽数のコントロールをしたら、一番茶の時に効果を確認することも大切です。たとえば、芽数を増やさないで芽重型の収穫をしようとしたのに、芽重が思惑通り出せなかったとしたら、別の要因で芽の生育が悪いのだと考えなければなりません。枝や茎の太さ、病害虫防除、施肥の効果、根の分布など、茶園管理を長期的に振り返って樹勢の回復に勤める対策を立てる必要が出てきます。期待される成果が得られなかった時、広角でとらえた茶園管理を行うためには材料となるデータが必要となります。明確な根拠をもって秋整枝を行うようにしましょう。
また、樹齢が古い茶樹にはコントロールに限界があり、再生能力が低下している場合もあります。秋整枝のように樹勢を判断する機会に改植を検討することも重要です。

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8月号もくじ 8-1:台風 8-2:秋肥2・防除8-3:秋整枝の意味8-4:秋整枝の基礎8-5:遅れ芽の影響

 

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