8月号 4.秋整枝の基礎知識
-秋整枝の技術の基本-


収量構成要素と収量
※摘採面積率100%の場合

収量/10a
1芽重(g)
枠芽数(本)
400kg
0.30
53
0.40
40
0.50
32
0.60
27
600kg
0.30
80
0.40
60
0.50
48
0.60
40
800kg
0.30
107
0.40
80
0.50
64
0.60
53

8-4-1.芽数は収量構成の重要な因子

前述のように、秋整枝は翌年一番茶の芽数をコントロールする作業です。そこで芽数とは何かをお話しておきましょう。
芽数とは、収量構成の重要な因子であり、芽数・芽重・摘採面積の3つが収量構成です。右表で説明しますと、摘採面積率100%の場合で600kgの収量をあげるためには、0.5gの1芽重で枠あたり48本の本数が必要ということです。
この収量構成のバランスが 収穫の経済的価値を左右するため、芽数をコントロールすることによって茶園のもつ力を最大限に活用する手段として秋整枝を行うのです。
私としては、1芽重は0.5〜0.6gの力のある芽が望ましく、芽数は枠摘み(20cm×20cm)あたりで60本、多くても70本が良いと考えています。

基本編ロゴ 摘採面積率
枠摘み収量
特集 ●特集4-枠摘み調査


よく伸びた茶園
残す節で芽数をコントロールするため、生育良好ならば選択の幅が広い。
生育不良園
生育不良園では摘採面をならす程度しか整枝できず、秋整枝の選択肢は狭い。

8-4-2.秋整枝前の茶園観察

秋整枝の前に、茶園の芽数や樹勢を知っておくことが大切です。芽数は、枠摘み収量を調査して多いのか少ないのかを客観的に判断します。そのときに、頂芽が多いのか側芽が多いのかも観察しましょう。
現状の樹勢を知るには、最終芽の生育状態がバロメータとなります。 整枝を深くやってもさらに側芽がよく伸びていれば、その茶園は生育が良いと判断できます。秋の光合成がいちばん活発な時期に成熟したよくはたらく葉が充分にあれば、秋整枝をして芽数を増やしても順調な生育が見込めるわけです。7-1-6でお話ししたように、生育の良い最終芽をつくっておくことが、上手な秋整枝、ひいては翌年の収穫につながります。

基本編ロゴ 有効芽数

芽の出方8-4-3.秋整枝による芽数のコントロールとは?

以前にもお話ししたように、茶の芽の先端にある成長点をカットすることにより側芽が出る生態を利用して芽数をコントロールします。成長点をカットする率が高いほど側芽が増えて芽数が多くなるので、側芽を出したい度合によって秋整枝の深さを調整するのです。 整枝によって芽数はだいたい1.5倍になると考えられます。これは、有効芽数で考えて100%使える芽が出るわけではないから。さらに、摘採面に残された最終芽(三番茶を摘採しない園では三番茶の葉)が不規則に伸びていますから、そのうちどのくらいの芽の先端をカットするか、何節残すかでコントロールします。

基本編ロゴ 芽の成長ホルモンオーキシン


芽を出す節●8-4-4.良い側芽を得るためには

経営に関係なく良い芽を得ようというのであれば、茶樹の生理生態からいって栄養状態の良い頂芽を収穫するのがよいのです。しかし、それでは芽数が少なく目標収量に達しません。
そこで、芽数を増やしたい茶園では、力のある側芽を出すために秋整枝で微妙な深さの調整を行います。最終芽がよく伸びた茶園では、芽の下から一節または二節目から出した方が強い側芽が得られます。

基本編ロゴ 芽の種類(頂芽と側芽)


仮整枝位置8-4-5.秋整枝だけで芽はそろわない

ときどき「秋整枝で芽をそろえる」と聞くことがありますが、摘採面を整える意味を含むだけで、秋整枝だけでは芽の均一化はできません。芽をそろえる作業としては、二番茶を早摘みしないこと、遅れ芽の処理をきちんとすること、枝の構成をコントロールする更新などがあり、秋整枝の時点でそろえるのでは遅いのです。あるいは、生育が極めて良好な場合や遅れ芽が徒長した茶園では、秋整枝の2週間前に仮整枝をして徒長した芽を先にカットする処置をして芽をそろえる方法があります。
また、三番茶摘採を中止している茶園で「芽がそろわない」と言われますが、たしかに三番茶を摘採した方が芽はそろいます。しかし、その茶園の樹勢が摘採に耐えるだけの力をもっているかを考えなければなりません。三番茶を摘採しても充分に良い芽が得られるだけの樹勢があれば摘採し、それほどの力が無ければ芽をそろえることよりも樹勢の回復を優先させるべきだと思います。

※秋整枝の実践的なお話は、9月号
←前ページへ ロゴ 次ページへ→
 

8月号もくじ 8-1:台風 8-2:秋肥2・防除8-3:秋整枝の意味8-4:秋整枝の基礎8-5:遅れ芽の影響

 

お気軽にご意見ご感想をお寄せください。

お茶街道文化会
主催:カワサキ機工株式会社

ochakaido@ochakaido.com